シュリ日和

まいにちに生きる

午後

 

 

久しぶりに白山に行った。

 

ひとつ手前の春日に用があったから。

 

白山通りを真っ直ぐ歩く。

 

午後の陽射しが温かい。

 

白山神社へは、いつもは駅から向かうのだが、今日は春日からだったため、駅手前のいつもは通らない裏道を通って神社へと向かった。

 

商店街風の通りを左右チラチラ見ながらゆっくりと進んでいたら、神社境内へと続く石階段のほぼ真向かいに位置する場所に、無機質な雰囲気の建物があった。

 

看板を見たところ、2階は本と珈琲のお店のよう。 なんとなく私が好きそうな予感。

 

迷いなく2階へと上がる。戸は開かれていて、中には女の店員さんが1人。

 

思った通り、そこは私好みの空間だった。

 

飲み物をいただきながら本が読めるか尋ねると、OKだったので、数少ないメニューの中から、りんご100%ジュースを注文した。

 

最近りんごジュースにハマっている。

 

店内に置かれている本がまた、私の趣味に合うものばかりで、気分も上がる。

 

写真を撮ってもいいか確認すると、快くどうぞ!と言ってもらえた。

 

さらには、是非インスタなどにアップしてください。とまで言われる。人気のお店なのかもしれない。

 

店内をウロウロしながら、気に入ったポイントポイントで写真を撮る。なんとなく、お洒落な図書室のような雰囲気だ。

 

窓際の白いガーゼのような素材のカーテンに、午後の陽が差し、植物の影が揺れている。

 

気になった数冊を手に、席に戻る。

 

りんごジュースが届けられていた。

 

りんごジュースを飲みながら、岡本太郎が1960年代に沖縄を撮った写真集を見る。

 

岡本太郎の写真は下手な写真家の写真よりよほどいい。

 

キャパのような流れ(動き)のある写真。まるで、生き物の息吹が伝わってくるような、瞬間の生命の煌めきを切りとったような、新鮮なイキの良さは、岡本太郎がシャッターを切る瞬間の本人そのものだったのかも知れない。

 

岡本太郎の撮った沖縄は、沖縄そのものだった。

 

ほかに、クレーの詩画集、絵本のよあけ、坂口恭平のcook(料理本)、星の辞典(装丁が美しすぎる)などを手にとった。

 

魅力的な本が他にもたくさんあったが、あまり欲張るのも品がないと思い、数冊に留めた。

 

久しぶりに文化的なものに触れた喜びが、じんわり心と身体に広がる。

 

あのひとときは確かに豊かだった。

 

お客さんは私ひとりで、あの空間を独り占めはかなりラッキーだったと思う。

 

小一時間堪能した後、お店をあとにし、白山神社へ。

 

菊理姫にご挨拶をし、帰路へつく。

 

思いがけず、とても良い午後になった。

 

 

 

 

隠れ家のような本屋さん