菜の花列車
ある昼下がり
心の清い人にしか見えないという
列車が目の前に現れた
ひと通り車内を調べたあと
窓際の席に座り
外を眺めた
黙って眺めてばかりでいると
そういう思想の者かと
思われてしまうので
長々と座っても居られず
体を置いて
再び歩き回る
ふと懐かしい気配がして
振り返ると
温かい日差しのような光線が
一筋に胸へと飛び込んできて
驚いたと同時に
誰かの指先に触れた
その、あまりにも鮮烈な印象に
長いことずっと探していたものは
これだったのかと
窓の外の
眩いばかりの黄色の海に
躊躇うことなく投げ出して
綺麗に終えた
夢のようなこの世の
最期であった
菜の花に捧ぐ