シュリ日和

まいにちに生きる

蕾の供養

 

 

買い物の帰り道のこと。

民家の軒先で一本だけ梅が満開に咲き誇っていた。かわいい鳥が一羽、懸命に蜜を啄んでいる。写真を数枚撮り、ふと目線を下に落とすと、花が開かぬまま落ちてしまった蕾たちが目に入った。「……このまま見過ごすわけにはいかない。」そんな気持ちが湧き起こり、家へと持ち帰った。私はこれからサンドウィッチを作る予定だ。

卵を茹で、キュウリを切る。パン屋さんで買ってきた小さめのイギリスパンにバターを塗る。丁寧に具材を重ねていく。サンドしたパンを大きめの包丁でカットした。お気に入りのお皿に並べ、一緒に楽しむための桜味のミルクドリンクをつくった。私は桜味の飲み物が好きなのだ。

サンドウィッチを並べたお皿と桜味のドリンクが入ったカップの横に、先ほど持ち帰った蕾を切子のカットが入ったガラスの文鎮の上に乗せ、サンドウィッチパーティー兼、蕾の供養を始めた。

ちょうどその時、YouTubeの自動再生で、聴いてたわけじゃなかったのに、ブルーハーツの''情熱の薔薇''が流れ出して聴き入ることに。情熱の薔薇ってどんな曲だっけ?ブルーハーツの曲のなかではそれほど好きと思っていた曲ではなかったので、新鮮な気持ちで聴いた。



なるべく小さなしあわせと

なるべく小さなふしあわせ

なるべくいっぱい集めよう

 

心のずっと奥のほう

 

 

なんかここが今日の自分に響いて響いて、開けなかった蕾たちを想いながら、サンドウィッチを頬張りながら、いっぱい泣いた。涙が口に入ってしょっぱいのを感じるくらい泣いていた。図らずも蕾の供養らしくなっていた。

 

 

今日は満月だ。

昨夜の月の写真を再会したほんとうの友だちが送ってくれた。満月は力強いパワーをくれる時もあるが、今日の月からは、黙って全てを許し包み込んでくれるかのような確かな包容力を受け取った。

私はずっと、愛する人をまた失うかもしれない怖さを少しずつ少しずつ乗り越えてここまで来たのだと思う。心のずっと奥のほうをしっかり見て感じてしまうことはものすごく怖いことで、それができない人があまりにも多い中で、私は遂にそれをやりきった。勇敢な魂だと思う。

爽やかにどこまでも切ない想いを抱きながら、新たな扉を開ける時が来ている。もう逃げることはないだろう。

今日は多くの人生を生きてきた全私(←ぜんわたし)と共に過ごそうと思う。

静かで賑やかで痛みと華やかさとモノクロとカラフルを行ったり来たりしながら、過ごそう。

心のずっと奥のほうを旅しよう。

 

 

 

蕾と共に生きる